エクセル(Excel)管理かシステム化を進めるか

中小企業を中心に、「自社はエクセル(Excel)管理で十分」「現状エクセル(Excel)管理で事足りるが将来的にはシステムに移行すべきか思案中」など、
『エクセル(Excel)管理かシステム化を進めるか』を検討する動きは中小企業においても多く見られます。

顧客管理は工夫次第で業務全体を効率化できる可能性を持つ反面、自由度が高すぎるためどう管理したらよいか頭を抱える部分でもあります。
さらに年々管理する情報量は膨れ上がり、ただ情報を記録するだけでは、十分な分析や企画立案を行うことは難しいのが現状です。
そこで今回は、エクセル(Excel)管理における業務のメリット・デメリットを考え、顧客管理のシステム化が有効かどうかを考察していきたいと思います。

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エクセル(Excel)が顧客管理に使われる理由とは?

エクセル(Excel)は顧客データを管理できる一番手軽なツール

エクセル(Excel)は、Windowsのパソコンであればすでに搭載されています。
表計算はもちろんグラフや帳票なども簡単に作成でき、名簿や見積をはじめ分析資料・プレゼン資料等々、あらゆる業務に適用します。
操作方法が分からなくても、webサイトでノウハウや無料のテンプレートも多数公開されているので、上司やお客様への説明用の資料作成時には最適なツールといえます。

顧客情報を入力できるフォームを作成して別シートへ蓄積したり、ボタン一つで期間中の売り上げ変動のグラフを作成できるといった使い方も可能で、システム感覚でどんどん作り込まれます。すると顧客登録やグラフ作成は簡単に誰でもできる反面、機能の詳細は作成者でないと分からない状況が発生するかもしれません。
さらに作成者が異動や退職してしまっては、少し不都合があっても使い続けるしかない状況に陥ってしまいます。
いくら業務効率化を進めようと思ってもなかなか顧客管理のシステム化には踏み切れない理由はこんな事情もあるのではないでしょうか。

業務でエクセル(Excel)を活用する場合の3つの有効点

[エクセル(Excel)ができる事]

  • 表計算
    関数によって合計、平均、抽出、検索などあらゆる加工が可能
  • グラフ表示
    表にした情報を目的に応じたグラフ化が可能
  • マクロ機能
    簡単なプログラミングを埋め込むことが可能

[エクセル(Excel)のメリット]

それではエクセル(Excel)が業務にもたらすメリットとは何でしょうか。
  • 扱いやすさ
    パソコンが扱える人はほとんど使用できる。操作に対する抵抗が低いため、提出用の名簿や帳票の作成、出力などの業務に手間取ることが少ない。
    マクロ機能によりプログラムでしか行えない操作もシステムに比べ簡単に設定することができる。
  • データ分析
    関数を活用することで多方面からの分析が簡単に行えプレゼンに必要な分析結果レポートや付随するグラフ出力が簡単にできる。
  • グループ内の共有
    大抵のパソコンにはExcelは搭載されているため、社内サーバーにエクセル(Excel)ファイルを保管し社内で共有し閲覧・編集することができる。

このように、エクセル(Excel)はシステムから抽出したデータを細かく分析したり分析結果を共有して閲覧するなど、個人的な業務効率を高めようとする場合はこの上ない強い味方になるでしょう。

[エクセル(Excel)のデメリット]

逆にエクセル(Excel)を活用するデメリットとはどんなものでしょうか。
  • 複数人での同時編集が困難
    グループ内でのファイル閲覧の共有は可能だが、同時に編集すると、エラーや保存不可になる場合がある。
  • バージョンによるファイル管理が困難
    エクセル(Excel)のバージョンによって機能に差異があるため、見え方が異なる場合がある。(※現在はOffice365にて常に最新バージョンがインストールされるようになりました)
  • 保存データ量の限界
    作成当初はエクセル(Excel)で管理できる顧客数だったが、顧客が増加した場合や顧客単位に取得できる情報量も大幅に増加し、管理できるデータ量が不足する可能性がある。
  • 専門的な知識を要するため属人的になりがち
    エクセル(Excel)の高度な機能を使えば使うほど、対応できる人が限られてしまう。

このように、企業規模の拡大や、高度な分析、社内での情報共有・編集が目的の場合、いつかはエクセル(Excel)管理の限界は訪れます。

エクセル(Excel)管理からシステム移行で業務はどう変わる?

[エクセル(Excel)で行う顧客管理]

  • 異なる業務ごとに別々に顧客を管理している
  • 顧客データは営業顧客リストとは紐づいていない
  • エクセル(Excel)で作成した納品書を販売管理システムに手入力し、分析を行う
  • 日報は各自エクセル(Excel)で作成→ファイルまたは書類で提出

上図は実際にシステム移行を行った企業の移行前の管理状況です。この企業は顧客情報や営業関連、請求関連、日報と4つのエクセル(Excel)でそれぞれ管理しており、それらは連動していませんでした。請求関連の業務と顧客データが紐づいていないので、請求書作成時に確認するエクセル(Excel)が複数になってしまいます。さらに、業務の進捗状況を日報にて改めて作成する必要があるため、全体的にエクセル(Excel)入力に長時間費やしてしまいます。

このような例の場合、CRMシステム(※1)導入により、以下のような効果が期待されます。

[システム移行した顧客管理]

  • 分散した顧客データをひとまとめにできる
  • 顧客情報はもちろん、紐づく営業進捗や請求なども同時に管理できる
  • 営業実績などをもとに分析を行う事ができる
  • 登録した業務内容を日報形式で出力することができる

システム移行することで、入力や確認の手間を大幅に省く事ができます。
さらに顧客情報を社内で共有することができるため、他業務や上司への連絡・報告作業の時間短縮にもつながります。

また、エクセル(Excel)を提供しているMicrosoft Windowsが、2020年1月14日にWindows7のサポートを終了したこともCRMシステム移行を考えるきっかけになっていると考えられます。もちろん、Windows7サポート終了しても、お使いのエクセル(Excel)バージョンが使えなくなるわけではありませんが、新しいWindows10が月額制のOffice365への移行を推奨しているため、使用しているofficeのバージョンによっては操作環境が異なる場合があるとされています。

1:CRMとはCustomer Relationship Management(顧客関係管理)の略。

まとめ

システム移行をきっかけに業務の在り方を見直す

  • エクセル(Excel)はあらゆる業務に適用するため扱いやすい。お客様へのプレゼン資料作成などには最適なツールである。
  • エクセル(Excel)は扱いやすい反面、作り込みによる属人化や複数人同時の編集が困難など、不特定多数が同時使用するにはデメリットが多い。
  • CRM(顧客管理)システムへ移行した場合、入力や確認の手間を大幅に省くことができるほか、情報を社内共有も可能になる。

データ移行や費用面を考えると、顧客情報のエクセル(Excel)管理をシステム化するのは大きな弊害があると考えてしまいがちです。

しかし、近年国を挙げてIT化の推進に取り組む局面を迎え、システム化のニーズは最高潮を迎えているのが現状です。
顧客管理(CRM)システムや営業支援(SFA)システムなど、エクセル(Excel)に代わる高機能なシステムは有料・無料問わず数多く紹介されています。顧客データ量や業務内容を吟味した上でシステム化する事も、働き方改革・企業改革を見据えた第一歩といえるのではないでしょうか。